「クズたん♡」と「現実」
世界はいつもどうり朝を迎える。
繰り返される宇宙の周期は、いつもどうり憂鬱な私を繰り返させていた。
これが夢ならいいのに…。
…クズたん
…クズたん
「クズたんおはよう♡」
彼女は既に起きており、お弁当を詰め終えていた。
嫌な夢にうなされ汗をかいている事に気付く。
私は早々に身支度を済ませ、朝食は取らずに玄関へ向かう。
くたびれた靴を履いてドアノブに手をかけた。
「行ってらっしゃい♡今日も頑張ってね♡」
チュ♡
笑顔で送り出してくれる彼女。
「ありがとう行ってくる」
彼女はお弁当と共に、空の2ℓペットボトルを渡してくれた。
玄関から死角へ消えていく間、私の背中には、彼女の不安な視線を感じた…。
差し押さえが迫る車に乗りこみエンジンをかける。それと同時にガソリンのエンプティランプが点灯する。
道が混み合う前に会社へと向かう。
職場に着くとまず、給湯室で顔を洗い目を覚ますと、続けて2ℓのペットボトルを満たす。
それとは別に携帯している500mlも満たす。
ブラインドの隙間から漏れる朝日。照らされるデスクに座りPCを立ち上げる。
その日の業務スケジュールを再度確認し、必要書類をまとめ終えると、慣れた手順でネットを開く。
借金の返済日が迫っていた…。
金策 ブラック…
ブラック 融資…
ブラック 金策…
ブラック 融資 2ch…
…似たようなワードでぐるぐると検索するのが日課となっていた。
甘い言葉で溢れる情報とは裏腹に、淡い希望は次々と否決されていた。
そこへ取り引き先の業者からの電話が入り受話器を取る。
お決まりの挨拶が終える間に頭を切り替え、普段どうりの自分の声色を探りながら、問い合せに答えていく。
問い合わせの電話は仕事開始の合図となる。
仕事はミス出来ない。
ひとつひとつ手配に漏れが無いか慎重に進捗を進めていく。
一日の業務を最短で終わらせることに集中力を注ぐ。
出来るだけ空いた時間を作り、お金の借入先を探すことに充てなければならない。
昼休みになると、会社から5分程の場所にある人気の無い公園に身を移す。
お弁当の中身はジャガイモだった。
私はジャガイモを片手に、携帯電話で借入先を探す。
喉に詰まるジャガイモはペットボトルの水で流し込んだ。
多重債務、滞納、申込みブラック。
借入先は見つかるはずも無く、焦りは返済日が迫ると共に増していき、危ない橋へといざなっていく。
午後の仕事も早々に終わらせると、足早に会社を出る。
帰り道に無けなしの500円でガソリンを入れる。
真っ暗な部屋には誰も居ない。居るはずが無い。
これは現実なのだ。
水道は3日前に止まった。
電気は5日前に止められている…。
ガスは止まってから2ヶ月が経とうとしている。
「クズたん♡」と呼ぶ彼女の姿は夢だった。
暗闇の中、持ち帰った2ℓペットボトルの水でタオルを濡らし身体を拭く。
食欲も無く、うっすらと形を見せる椅子に腰掛け外を眺める。
惨めだと思った。
シラケた感情に涙は出なかった。
その夜、私は2回目の債務整理を考えた。
…一年後…
私は返済を開始していた。
新たに趣味も見つけると、それにのめり込んだ。
部屋の枯れかけていた観葉植物は水を得て、もう一度日光を求めようと強く葉を広げようとしていた。
…その一年半後…
観葉植物は枯れ果てていた…。
おわり(クズ迷走中……w)
【余談】
ギャンブルを断ち18日目が経過します。
当時の自分を思い出してこのブログを書いていると、この先またいつかギャンブル漬けになるのでは無いかと不安にもなります。
今、自分は駄目だとかクヨクヨはしてません。
クズたんはこのブログと共に継続をしていきます🏋️
(※以後、自分でクズたんと言う事は有りません。今回だけw)
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